はじめに
合意による遺産分割のやり直し
登記手続き
相続による移転登記をしていなかった場合、あらたに遺産分割協議書を添付して相続による移転登記を行います。
すでに相続登記がされていた場合でも、その相続登記を抹消した上で、新しい遺産分割協議書を添付して相続登記をすることができます。
税法上の問題
一度有効に遺産分割を行った後に分割協議をやり直した場合は、課税上は贈与の認定がされるようです。
ただし不動産取得税は課税されないとした判例もあります。
詳しくは税理士の方に相談してください。
関連判例
最高裁判所平成2年9月27日判決
共同相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をなしうることは、法律上、当然には妨げられるものではない
最高裁判所昭和62年1月22日判決
被上告人を含む相続人らは第1回遺産分割協議のうち本件相続土地に関する部分を相続人全員の合意によつて解除し改めてこれを第2回遺産分割協議のとおり分割協議をしたものであって、被上告人の右第2回遺産分割協議による本件相続土地の共有持分の取得は地方税法73条の7第1号所定の不動産取得税の非課税事由である『相続に因る不動産の取得』に該当すると解される
無効な遺産分割のやり直し
登記手続き
登記手続き自体は合意解除の場合と同じです。
相続による移転登記をしていなかった場合、あらたに遺産分割協議書を添付して相続による移転登記を行います。
すでに相続登記がされていた場合でも、その相続登記を抹消した上で、新しい遺産分割協議書を添付して相続登記をすることができます。
無効(取消可能)な遺産分割か否かの判断
共同相続人の一部が除外された場合
- 分割時に戸籍上判明していた相続人を除外した場合
遺産分割は共同意思の合致によりなされるものなので無効となります。 - 失踪宣告の取消しで死亡していたとされていた相続人の生存が判明した場合
失踪者が生存していることを知らずに遺産分割をした場合は有効であり、失踪宣告の取消しを受けたものは現存利益の範囲で返還請求をすることができることとなります。 - 被認知者を除外した場合
遺産分割を終わった後に、生前提起した認知訴訟の認容判決が確定した場合及び死後認知判決が確定した場合は、結果的に相続人の一部を除外して遺産分割をしたことにはなりますが、遺産分割自体は有効で、被認知者は価格賠償を受けることになります。
相続人でないものを加えて遺産分割をした場合
- 順位の変更をきたす場合
たとえば夫が亡くなり、妻と子供で遺産分割をした後に、親子関係不存在の訴訟が確定して、相続人が妻と亡夫の両親となった場合です。
この場合は、共同相続人の一部(後順位の相続人)が除外されたままになされた遺産分割協議でもありますので無効と解されています。 - 順位の変更をきたさない場合
無効とする説もありますが、遺産分割協議全体に影響を及ぼすような重要な財産でない場合は、取り戻した上で真正相続人間で分割すれば足りる、つまり残余部分の分割協議は有効であるという説が有力です。
遺産の一部が脱漏してなされた遺産分割
その脱漏していた財産が重要で、当事者がその遺産の存在を知っていたら、そのような遺産分割をしないであろう時は無効となります。判例も当事者が脱漏していた財産だけをあらたに分割することに合意できない場合などは無効であるとしています。
これに対して当事者の公平が図れるのであれば未分割遺産を分割すれば足りるとされることもあります。
債務不履行による解除
遺産分割協議において遺産を取得する代わりにほかの相続人に対して義務を負担することがあります。 その相続人に債務の不履行があったときに民法541条によってほかの相続人が遺産分割協議を解除できるでしょうか?
判例で解除を認めてると法的安定性が害されるとして解除を否定した例があります。
意思表示に問題がある分割協議
分割協議と利益相反
夫が亡くなり妻と未成年の子供で分割協議をする場合、未成年の親権者である妻が子供を代理して協議をすることが許されると、妻一人ですべてを決めることになってしまいます。そのため、民法ではそういったお互いの利益が相反することを親権者が子供に代わって行うことがないように特別代理人という別の代理人を立てるように定めました。
したがって、特別代理人の選任なしに、上記の利益相反行為をした場合は、その後に追認されない限り無効となります。
なお、利益相反に該当するか否かは形式的に判断されるので、完全に子供に有利な分割協議であっても特別代理人が選任されていないときは無効となるので注意が必要です。
税法上の問題
分割協議が無効であった場合や、取消した場合は相続税の更生を行うことができるようです。
ただし、更正を行なうためには遺産分割協議無効確認の手続きをとったりする必要があるので、詳しくは税理士の方に相談してください。
関連判例
最高裁判所平成元年2月9日判決
「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができない」


